事業承継に詳しい伊藤俊一先生へのインタビュー

先生は、事業承継詳しいですよね。先生が選ばれる理由は?

僕が選ばれる理由は2つあると思います。まず、金融機関、保険会社、証券会社から完全に独立した立場で見解を述べるので、偏った商品を押し付けることがないということですね。

もう一つは、私自身が、身内の相続問題に直結していて、その相続問題が遺産分割争いだったわけなんですけども、ようやく10年越しの裁判に決着がついたんですよ。

先生のレベルで10年ですか?相当だと思うんですけど。

その時に頼んだ弁護士や税理士が相続専門じゃなかったんです。それで僕や両親が痛い目にあってるんです。そこから、逆の立場から物事を見ることができるようになったなと。士業それぞれ得意分野があると思うので、やっぱりちゃんとした専門家に頼んだほうが良いよ、といったところですかね。

タックスプランニング(税務戦略)ができる税理士は数少ないですよね。

事業承継そのものも、タックスプランニングは現状、金融機関と証券会社が全部主導を担っているのですが、税理士自らそれを練るということを、99.999%の税理士が出来ません。断言できます。いません。

僕は金融機関に出向していた経歴があり、金融機関内部の本店コンサルティング部でスキームを組む側にあったので、自分で組めるんです。だからこそ、金融機関、銀行、証券会社や、保険会社の思惑どおりに進まないように、商品を抱き合わせで売りつけるようなことを僕はしません。特に銀行嫌い、証券会社嫌い、保険会社嫌いの中小企業のお客様がワンサカいらっしゃいますから、そういう方にはよく選ばれます。

99.999%ですか。

断言できます。いません。

事業承継について講座を開いているのですが、そのケーススタディの中でチームを分けて、 「実際にこういう問題を抱えている、こういった資本構成の会社」 で、タックスプランニングを考えて下さいと課題を作ってやってもらったのですが、誰もできませんでした。

先生ほどではないにしろ、みなさんスペシャリストですよね?

あらかじめ案内のパンフレットで、「基本的なことはお話ししません。真のプロ・エキスパートを養成する講座なので、基本的なことは勉強した上でご受講下さい」と強調したにも関わらず、全然できなかった。

余りにもできてなかったから聞いてみたんです。

「正直言ってください、難しすぎた方」

そうしたら、皆さんの手が挙がりました。

はじめ簡単だと思ったので、制限時間を20分くらいに設定したのですが、結局50分まで延長しても、それでもできなかった。

それはもっと時間をかければできるということではない?!

もう思いつかないんです。 普通の税理士は、税務申告まどを主体にやっていますから。それは申告書を書いてなんぼですから、それはそれでいいと思うのですが、税務申告書を何本書こうが、年末調整を何回やろうが、確定申告を何本やろうが、スキームとかタックスプランニングを策定できる能力が付くかというと、それはまったく別問題です。やっぱり実践していかないと無理なんです。

それは、先生の講義を聞くなりDVDを閲覧すれば身につくものなんですか?

身についていくものだと思いますし、自分でも実践しなきゃいけないものだと思います。例えば、金融機関から提案されたスキーム、タックスプランニングを鵜呑みにするんじゃなくて、本当にこれで良いかということを検証するんです。何度も何度も数をこなして、その習慣を身につけていけば、いずれは自分でも出来るようになります。

それが正しいかを検証する方法は、先生以外にありますか?

最初の頃は、良く分かっている人に相談を受けることが大事だと思います。 実際、金融機関から相談を受けていて、このスキームの妥当性を検証してほしいという依頼がよく僕の所に来ます。なので、僕は税理士の顧問もさせていただいています。

先生以外の方に聞くとしたら、金融機関の人と確認する形になってしまいますね。でも、それでは、向こう側に言われるがままということになりかねませんか?

ですので、そういうことがよくわかっている税理士を自分なりに探さないといけないですね。

できる人は限られますよね?講義を受けられた方が、先生が言う「簡単なこと」が身につくまでどれくらいかかりますか?

現実的には難しいので、わかっている人に顧問になってもらうしかないでしょう。

事業承継は、法務側の方たちもやられてますよね。それと先生のされていることは全く違うということですか?

全然違います。法務がやっている事業承継は、どちらかというと後継者育成とか、経営者が会社になじめるかとか、後継者指導の面が強いと思います。「中小企業等金融円滑化法」のように事業承継税制ありきでやってるものが多いので、弁護士が扱っているものとはかなり変わってきます。僕がやっているのは、税効果を最大限に発揮する、いわゆるタックスプランニングを中心にやっているものなので、弁護士がやっていることとは違います。

タックスプランニングには、信託なども入っているんでしょうか?

事業承継に関しては、僕は信託はやりません。持分とか、一般社団法人とか、そういったものは使います。信託はいま、信託税制の不備で、事業承継については使ってはいけないと思っています。

タックスプランニングで使う一般社団法人は??

何が違うかというと、一般社団法人とか持分会社というのは、税務上の出口が見えているんです。税務上、こういう課税関係になりますよという出口が見えているから使っていいんです。 信託はいま税務上の出口が見えていないので、提案しない。そういう違いです。だから、事業承継において信託を提案している司法書士の方もいますが、法律のことだけで、税制については全く考えてないです。

弁護士さん、司法書士さん、税理士さん。事業承継についてみなさん立ち位置が違いますが

司法書士と弁護士が唱える証券スキームは、非常に浅いですね。 事業承継に関して一番大きいのはTAXのほうですから、TAXの出口について分かっていない弁護士や司法書士が提案しているものに関しては、やっぱり浅いと思いますよ。

依頼している側にとって、どういう違いが出ますか。

依頼する側の希望によって変わってくるので、それはわからないですね。私は税効果を一番大切にしていますけども、それよりも争いごとにしたくないという意図を持っている人もいますから、そういう方は弁護士とか司法書士でテクニカルな方法を持っているので、選ばれる方もいらっしゃると思いますよ。身内の遺産分割問題あったという時に誰に頼みますか? 弁護士ですよね。 逆に相続税の節税をしたいと考えているとして誰に頼みます? 税理士ですよね。

身内の件はいつごろ片付いたのでしょうか。

身内の件は2年前ですね。 僕はすでに税理士をやっていましたね。 ただ遺産分割争いですので、もう弁護士案件です。相続税は10年前に払っていますので。

先生が行うタックスプランニングのスキームの中で依頼が多い案件というのは?

ご依頼が一番多いのは、親族内承継と企業内承継ですね。でもたまたまですよ。親族内承継と企業内承継が多い税理士もいますし。

先生のタックスプランニングの中で、親族内承継と企業内承継、M&Aの違いは?

その質問は非常に難しい質問ですね。親族内だとTAX、税効果だけじゃなくて争族の分も同時並行で考えなければいけない。企業内承継の場合だと、TAXだけじゃなく、M&Aとの比較交渉も考えなければいけない。企業内承継というと、役員とか従業員が承継するという意味だと思いますけど、いま役員とか従業員が、個人補償をつけられるのを嫌がるので、それの逃げのために、後継ぎがいないということでM&Aが活性化しているので、それとの比較考慮ですね。それをしなきゃいけない。M&Aに関してはいわゆる交渉の話になります。

相手側との交渉においてどういう立ち位置を示すかというところですね。M&Aに関して、普通は弁護士が統括するのですが、私はその立ち位置を自分でやっています。私が、弁護士、不動産鑑定士、公認会計士を束ねています。

何が違うかというと、私は税効果が一番気を付けていることですけども、親族内だと争いごとにならないかということが大きいでしょうか。

先生が難しいと思われたということは、他の先生方はそういうことは気にならない問題ということですか?

お客さんのニーズありきなので、M&Aをしたいとおっしゃっている会社さんに、息子さんに継がせましょうということはないじゃないですか。だからその案件ごとに考えますね。

まとめて一括で考えることはないと。

良い質問でしたね。考え直す良いきっかけになりました。確かに何が違うのかなって僕も思いました。お客さんありきで、お客さんがこうしたいというのに従うまでですから。

自分の得意分野に向かせてしまう先生がいる中で、伊藤先生のようにお客様に合わせて変えられるというのは、思ってらっしゃる以上に難しい行為だと思います。みな自分のスキームがあって、そちらに流し込んでいるような。

そうですね、弁護士、司法書士は特にそうですね。司法書士は信託。弁護士は事業承継税制。問題はだいたい決まっていますから。

他の税理士の方はどういうスキームを?

株式移動させているだけですよ。親族内で。普通に単純贈与させているだけです。 普段は一ツ橋で、信託税制研究しているんです。信託税制を研究すればするほど、信託は使えない。

僕も信託が分からなくてずっと勉強していたんです。

今は使って良い信託と、ダメな信託とはっきり二分されています。使っていい信託は「自益信託」です。いわゆる福祉型信託とか高齢者信託とかいうやつです。あれは大丈夫です。使ってはいけないのが「受益者連続型信託」です。あと「事業承継信託」もダメです。

でも使っている方もいますよね。

非常に批判を浴びています。お金のためにやっているわけだから別にいいのでしょうが。

それは将来お客さんに被害はないのですか。

ありますよ。

その人がいま儲けたいだけなので、お客さんの20年後30年後は知ったことではないのだと思います。1契約300万とれますから、今稼げればそれでいいんじゃないのでしょうか。私は自分のポリシーに反するので、そういうことはしません。

「受益者連続型信託」だとか「法人課税信託」だとか「受益者等が存しない信託」だとかやってはいけない、とんでもない。ところが一部の司法書士・行政書士が、そういった信託を売っているわけだから、数年後には問題になると思います。

明らかに信託法の理解が間違っています。

あるいは信託税制まで理解が及んでいない。

にもかかわらず、信託スキームを提案している司法書士・行政書士が多い。ということを警鐘しているんです。やっぱり公証人弁護士の遠藤先生とかはしっかりしていますね。元公証人で信託税制ばかりされていただけあって、しっかりしたものを作られます。

私は、事務所経営の拡大だとか、人材育成だとかそういうのは全く興味ない。僕はこの業界に長くいるつもりはないんです。 早くお金を貯めて引退したいですよ。。 申告書書きなんて、すべてパートの方達に任せていますから。

先生は、知識半端ないけど、実際はなにがしたいんですか?

僕が一番得意なのは「交渉」です。 例えば、少数株主から株式を買い取る際の交渉だとか。 やっていることが限りなく弁護士に近い。 実際に実務をやってみたらコンサルが一番得意だったという。 数字がちょっと強い弁護士というような立ち位置。

それは先生の講座を聞けば全て習得できますか?

全部教えているつもりです。私は全部オープンにしているつもりです。だって真似しようとしてもできないんです。学んだところで同じことができるようになるわけではない。僕は手の内を全部明かしますが、やれるもんならやってみろってね。経験してないとできない。